新型コロナウイルス対策で室内の換気が注目されています。流体解析を使った換気シミュレーションも多く実施されているようです。今回は、「オンライン流体解析ツール CATCFDzero」を使って換気シミュレーションをやってみたいと思います。
目次
CATCFDzeroとは
CATCFDzeroはオンラインで簡単に流体解析を行うことができるツールです。2次元、非圧縮性、層流、乱流、定常の熱流体解析が可能です。
汎用の流体解析ソフトは高価でとても個人では手が出せません。オープンソースの流体解析ソフトは使い方がとても難しく、簡単に使うことができません。
CATCFDzeroは2次元非圧縮の定常熱流れという限定ですが、オンラインで無料で使うことができ面倒なインストールや登録も不要で、簡単な操作でお手軽に流体解析が実施できます。
換気シミュレーション
最近ニュースでも、新型コロナウイルス関連の流体解析が多く見られるようになりました。スパコンを使った大規模な計算も実施されています。3次元非定常で流れ、温度、湿度、粒子その他様々な物理現象を加味し高解像度で計算するためには、スパコンのような大規模な計算機が必要になります。
しかし、大まかな流れを把握したり、ちょっとした条件や形状の違いを見たいときなどは、時間やコストをかけず電卓感覚でサクッと計算したいものです。CATCFDzeroはそんな時に最適です。そこで、CATCFDzeroを使って換気シミュレーションを行ってみましょう。
部屋の間取り
計算するのは3つの部屋と台所がある室内です。部屋にはそれぞれ窓があります。台所の換気扇をまわしたときに、どのように部屋が換気されるかを計算します。
窓を1箇所だけ開けた場合
最初に、部屋2の窓だけを開けた場合の計算をしてみます。
形状はブロック要素を8個配置して部屋の壁を作りました。流体は空気で、換気扇は流入境界にマイナスの速度を与え空気を外に吐き出す設定にしています。窓は圧力境界で、空気は室内の状況に応じて自由に流入します。
換気扇から空気が吐き出されると、空いている窓から新鮮な外気が入ってきます。これにより部屋2から台所へ空気の流れができ、部屋2はよく換気されている様子がわかります。
換気の様子を色分けしているのが右端の図です。青色は新鮮な空気、赤色は古い空気を表しています。部屋1や部屋3の一部は空気が滞留しており、新鮮な空気が流れて行かないので換気されていません。
窓を3箇所開けた場合
次に全ての部屋の窓を開けた場合の計算をしてみます。
今度は全ての窓から新鮮な外気が入ってきて換気されていることがわかりました。空気の滞留箇所をなくし、新鮮な空気の通り道を作ってやると効率的に換気できるようです。
さらに言えば、部屋3の上部はまだ空気が淀んでいる箇所があるので、ここの空気をうまく対流させるようにファンを設置するなどの案も考えられます。このように流体解析で結果を可視化すると、今まで見えなかった室内の気流の流れがよくわかります。
最後に
CATCFDzeroを使うと数分程度の時間で、このような流体解析を行うことができます。もちろん、実際の現象に近づけるには、3次元にしたり、非定常計算を行ったり、湿度を考慮したり、解像度を上げたり、、、と時間とコストをかけて計算してみるのもよいでしょう。しかし、ちょっとしたアイデアや今まで見えなかったものをコストをかけずサッと形にするには、CATCFDzeroのようなツールは役に立つと思います。
今回実施した計算の設定ファイルは以下からダウンロードできますので、ぜひ実際にCATCFDzeroで計算してみてください。
設定ファイルのダウンロード