NACA0012翼型の流れ解析に挑戦する

はじめに

CATCFDzeroでNACA0012翼型周りの流体解析に挑戦してみます。

航空機や自動車などの空力、外部流れの解析は流体解析の中でも様々なノウハウが必要な分野です。CATCFDzeroはいわゆる汎用の流体解析ソフトではなく、あくまで電卓感覚で簡単に流体シミュレーションを行うのが目的のツールです。メッシュの形状やサイズ、乱流モデルなどの物理モデルも必要最小限に抑えられています。しかし、様々な詳細設定が必要な難しい空力分野の解析でどこまで計算が可能なのかを把握しておくのは、ツールを使う上でも有意義なことです。

そこで、今回は2次元でも計算可能な航空機翼形状であるNACA翼型を対象に計算を行ってみたいと思います。

解析対象

NACA翼型はNASAの前身であるNACAによって開発された航空機の翼型です。ここでは、その中でも実測や他の流体解析でもよく使用されるNACA0012翼型を対象とします。NACA0012翼型の形状は上下対称で以下の式で定義されます。

$$y=\pm 0.6 (0.2969 \sqrt{x}-0.1260x-0.3516x^2+0.2843x^3-0.1015x^4)$$

NACA0012翼型

翼に前方から空気が流れてくると、翼の上下に圧力差が生じ、上向きの力である揚力が発生します。これが機体を上に持ち上げ飛ぶことができます。翼が水平から傾いていると流れ場が変わり揚力の大きさも変わってきます。この翼の傾き α を迎角と呼びます。

翼と迎角

今回は、迎角 α を変えた時の揚力を実測と比較してみたいと思います。

解析モデル

翼型は翼弦長 2m とします。解析領域は Lx 4m × Ly 2m とし、中央に翼を配置します。左端に流入境界を設定し、流入速度を与えます。右端は圧力境界で出口とします。上下はスリップ壁に設定します。

解析領域

通常の外部流れの解析では、対象物の大きさに対して数10倍のオーダーの領域をとるのが普通です。こうすることで、境界条件の影響を避けることができます。しかし、CATCFDzeroは均一メッシュをベースにするため、対象物に対して解析領域が大きすぎるとメッシュ数が多くなりすぎ計算できなくなってしまいます。ここは、あえて対象物の周りのみを計算領域とすることにします。

翼はソリッド機能により曲線データを読み込み定義します。メッシュ数は Nx 200 × Ny 100 として、ソリッド表面は分割レベル2で局所細再分割により細かくしています。(※メッシュ分割を100より多く設定する場合は、拡張機能を使用します。)

実測と比較するため、レイノルズ数 Re = 6.0×106 、マッハ数 Ma = 0.15 の条件で計算を行いました。流体密度は 1.225 kg/m3、粘性係数は 1.78936×10-5 Pa・sとします。この条件では、流入速度は U = 43.821 m/s となります。乱流モデルは標準k-εモデルを使用します。

解析結果

速度、流線、圧力の結果

迎角 4° の速度コンター図と流線、圧力コンター図を示します。

迎角 4° (上)速度コンター図と流線、(下)圧力コンター図

前から来た流れは、翼の前縁で上下に別れ翼に沿って流れていきます。この時、翼の上面で速度が速くなって圧力が下がっています。翼の上下に圧力差が生じ、これで上向きの揚力が発生します。

次に迎角 10° の結果を示します。

迎角 10° (上)速度コンター図と流線、(下)圧力コンター図

この場合は、翼上面の流れは翼の後半で翼表面から剥離し、翼後端付近に渦を作っていることがわかります。

さらに、迎角 14° の時の結果です。

迎角 14° (上)速度コンター図と流線、(下)圧力コンター図

今度は上面の流れは、翼前縁付近でいきなり剥離し翼上面に大きな渦を形成しています。また、その渦は後方の出口境界にまで達しているため、解析結果は境界条件の影響を受けている可能性が大きいです。

揚力係数 $C_L$ の実測との比較

では、Ladsonによる風洞実験[1]と比較してみます。各迎角に対する揚力係数 $C_L$ を比較します。揚力係数は次式で定義されます。

$$C_L = \frac{L}{\frac{1}{2} \rho U^2 A}$$

$L$:揚力、$\rho$:密度、$U$:主流の流速、$A$:翼面積

(※CATCFDzeroでは拡張機能で物体表面にかかる力を出力することができます。)

$C_L$値の比較

グラフは横軸に迎角、縦軸に $C_L$ をとっています。迎角 6° までは実測とよく一致していますが、8° から 10° 付近で実測からずれていくことがわかります。上述のとおり、ちょうど翼後半で剥離が始まるとずれているようです。実測では、もっと迎角が大きくても $C_L$ は単調に増加しているため、実際には大きな剥離が起きず流れは翼に沿って流れていると推測できます。Ladsonの実測では、迎角 18° 付近で急に $C_L$ が落ち込んでおり、この時点で大きな剥離が生じ、いわゆる失速の状態にあると思われます。つまり、CATCFDzeroの計算の方が剥離が生じる迎角が小さいと考えられます。

これには、いくつか理由が考えられますが、ひとつは形状の解像度とメッシュ構造にあります。計算メッシュは構造格子をベースにしたボクセルメッシュです。これは下図のように曲面を持つ形状では、その表面で階段状のメッシュ構造になっています。

翼表面の拡大

階段上のメッシュ構造は、剥離を誘発しやすいと考えられます。また、流体解析では物体表面にレイヤーメッシュという薄い境界層メッシュを配置しますが、空力計算ではこのレイヤーメッシュの厚みや層数も大変重要なファクターになってきます。

また、乱流モデルも剥離がシビアな計算においては重要な要因にあげられます。空力計算では、k-ω SSTモデルやSpalart-Allmarasモデルといった乱流モデルがよく使われます。CATCFDzeroでは標準k-εモデルが使われるため、剥離の捉え方が異なる原因となりえます。

他には、前述した領域の大きさなどの問題もあります。実際の航空機や自動車などの空力計算は様々なノウハウを駆使して行われます。当然メッシュ数などの計算規模も大きくなり、解析全体の時間やコストがかかってきます。

まとめ

今回は、CATCFDzeroでNACA0012翼の流体解析を行ってみました。剥離の仕方により実測との間に違いがあることがわかりました。しかし、このような機能上の要因や結果の違いを把握した上で、計算結果を定性的に見たり、時間やコストをかけずサクッとアイデアを可視化してみるにはよいツールと思います。目的に応じて、汎用の流体ソフトと使い分けるのもよいのではないでしょうか。

参考文献

[1] Ladson, C. L. Effects of Independent Variation of Mach and Reynolds Numbers on the Low-Speed Aerodynamic Characteristics of the NACA 0012 Airfoil Section. NASA Technical Memorandum 4074. 1988

スポンサーリンク
科学技術計算のご相談は「キャットテックラボ」へ

科学技術計算やCAEに関するご相談、計算用プログラムの開発などお困りのことは「株式会社キャットテックラボ」へお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

フォローする

スポンサーリンク