オンライン熱解析CATTHMのチュートリアルです。
目次
解析概要
このチュートリアルでは、室内の非定常の温度変化を計算します。
窓がある6畳の広さの部屋を考えます。外気が低温の冬の条件で、室内の熱が窓ガラスを通して放熱され、室温が下がっていく様子を計算します。窓ガラスが1枚の場合と空気の中空層を持つペアガラスの場合で、どのような違いがあるかを調べます。
計算条件
- 窓ガラス
- 寸法:1枚あたり厚さ 2 mm、面積 1 m2
- ペアガラス中空層:厚さ 10 mm、熱抵抗 0.09 K/W
- 物性値:密度 2500 kg/m3、比熱 850 J/(kg K)、熱伝導率 1.0 W/(m K)
- 初期温度: 20 ℃
- 室内
- 寸法:広さ6畳(底面10 m 2 × 高さ 2.5 m = 25 m3)
- 空気物性値:密度 1.205 kg/m3、比熱 1007 J/(kg K)、熱伝導率 0.0257 W/(m K)
- 窓との対流熱伝達率 :8 W/(m2 K)、
- 窓以外は断熱
- 初期温度: 20 ℃
- 外気
- 温度固定:0 ℃
- 窓との対流熱伝達率 :20 W/(m2 K)
- 計算時間:18000秒(5時間)
解析モデル
窓ガラス1枚のモデル
計算ノードは、外気(outer)、窓ガラス(glass)、室内(inner)の3つとします。外気ノードは温度固定です。
ペアガラスのモデル
計算ノードは、外気(outer)、窓ガラス1(glass1)、空気中空層(hollow)、窓ガラス2(glass2)、室内(inner)の5つとします。
熱抵抗の計算
解析設定の前に、熱抵抗を算出しておきます。
窓ガラス1枚のモデル
外気や室内の空気と窓ガラスの間の対流による熱抵抗 $R$ は、
$$ R = \frac{1}{hA}$$
ここで、$h$:対流熱伝達率、$A$:伝熱面積
で表されます。
また、窓ガラスの熱抵抗は、
$$ R = \frac{\delta}{\lambda A}$$
ここで、$\delta$:厚み、$\lambda$:熱伝導率
と書けます。
したがって、外気ノードと窓ガラスノードの間の熱抵抗は、
$$R_{outer-glass} = \rm{ \frac{1}{20 \times 1} + \frac{0.002 / 2}{1 \times 1}=0.051 \quad [K / W]}$$
と計算できます(窓ガラスの表面からノードまでの距離は厚みの半分であることに注意)。
同様に、窓ガラスノードと室内ノードの間の熱抵抗は、
$$R_{glass-inner} = \rm{ \frac{0.002 / 2}{1 \times 1} + \frac{1}{8 \times 1} =0.126 \quad [K / W]}$$
となります。
また、非定常の計算を行うため熱容量も算出しておきます。窓ガラス一枚の熱容量は、
$$C_{glass} = \rho V C_p = \rm{2500 \times 0.002 \times 850 = 4250 \quad [J/K]}$$
ここで、$\rho$:密度、 $V$:体積、 $C_p$:比熱
室内空気の熱容量は、
$$C_{inner} = \rm{1.205 \times 25 \times 1007 = 30335 \quad [J/K]}$$
と計算できます。
ペアガラスのモデル
ペアガラスの場合も同様に熱抵抗を計算すると以下のようになります。
$$R_{outer-glass1} =\rm{ \frac{1}{20 \times 1} + \frac{0.002 / 2}{1 \times 1}=0.051 \quad [K / W]}$$
$$R_{glass1-hollow} =R_{hollow-glass2} =\rm{ \frac{0.002 / 2}{1 \times 1} + \frac{0.09}{2} = 0.046 \quad [K / W]}$$
$$R_{glass2-inner} = \rm{ \frac{0.002 / 2}{1 \times 1} + \frac{1}{8 \times 1} =0.126 \quad [K / W]}$$
また、中空層の熱容量は、
$$C_{hollow} = \rm{1.205 \times 0.01 \times 1007 = 12.13 \quad [J/K]}$$
です。
窓ガラス1枚のモデル
まず、1枚ガラスの窓のケースを計算します。
モデル作成
熱ノードの作成
熱ノード3つを追加します。
[熱ノード追加]ボタンを押すと「熱ノード追加モード」になるので、ノードを作成したい位置を3か所、マウスでクリックします。マウスを右クリックすると確定され、ノードが追加されます。リンクの追加
次に、ノードを接続してリンクを追加していきます。NT1とNT2、NT2とNT3のリンクを作成します。
[リンク追加]ボタンを押し、「リンク追加モード」にします。まず、NT1ノードをピックします。続いて、NT2ノードをピックします。これで、NT1とNT2がリンク接続されます。次に、NT2とNT3もピックし、接続します。接続したら、右クリックで確定します。解析設定
熱ノード条件の設定
[モデル:熱]メニューを開き、熱ノードの条件を設定します。複数あるため「表入力」で入力していきます。「モデル:熱ノード」の[表入力]ボタンを押し、ノードの表を開きます。NT1は外気ノードとします。ラベル「outer」、タイプ「固定」、初期温度「0」を入力します。
NT2は窓ガラスノードとします。ラベル「glass」、初期温度「20」、熱容量「4250」を入力します。NT3は室内ノードです。ラベル「inner」、初期温度「20」、熱容量「30335」を入力します。
入力が終わったら[適用]ボタンで確定します。設定が終了したら、[キャンセル]ボタンか、[×]ボタンで閉じてください。
※[OK]ボタンを押して閉じても構いません。設定が適用後パネルが閉じられます。
※外気ノードは温度固定のため、熱容量は関係ありません。
熱リンク条件の設定
次に熱リンクの条件を設定します。「モデル:熱リンク」の[表入力]ボタンを押し、リンクの表を開きます。
LT1(outer-glass)の熱抵抗に「0.051」を入力します。LT2(glass-inner)の熱抵抗に「0.126」を入力します。入力が終わったら[OK]ボタンまたは[適用]ボタンで確定します。
モデルは以下のようになります。
計算設定
[計算設定]メニューで、計算条件の設定を行ないます。「計算タイプ」で「非定常」を選択します。計算時間は「18000」、出力間隔は「60」を入力しておきます。以上で解析設定は終了です。
計算実行
設定が終了したら、[計算実行]ボタンを押します。
計算が収束し終了すると、「計算終了 : 正常に終了しました。」と表示されます。
結果の確認
計算が終了すると、[グラフ]タブに各ノードの温度の時系列グラフが表示されます。
時間軸が[sec(秒)]単位で分かりにくいので、時間単位を[hr(時間)]に変更してみます。[表示オプション]ボタンで、表示オプションパネルを開きます。
非定常グラフの「時間単位」を「時間」に変更し、[再表示]ボタンを押します。
初期に20℃であった室温(inner)は、1時間後には10℃程度まで下がっており、5時間後には0.75℃まで下がっています。
ペアガラスのモデル
次にペアガラスの窓のケースを計算します。再度新しく、CATTHMを起動します。設定は、1枚ガラスと同様に行ないます。
モデル作成
熱ノードの作成
ここでは、熱ノード5つを追加します。
リンクの追加
次に、ノードを接続してリンクを追加ます。NT1とNT2、NT2とNT3、NT3とNT4、NT4とNT5のリンクをそれぞれ作成します。
解析設定
熱ノード条件の設定
[モデル:熱]メニューで[表入力]を開き、熱ノードの条件を設定します。NT1(外気ノード):ラベル「outer」、タイプ「固定」、初期温度「0」
NT2(窓ガラス1ノード):ラベル「glass1」、初期温度「20」、熱容量「4250」
NT3(中空層ノード):ラベル「hollow」、初期温度「20」、熱容量「12.13」
NT4(窓ガラス2ノード):ラベル「glass2」、初期温度「20」、熱容量「4250」
NT5(室内ノード):ラベル「inner」、初期温度「20」、熱容量「30335」
熱リンク条件の設定
次に熱リンクの条件を設定します。「モデル:熱リンク」の[表入力]ボタンを押し、リンクの表を開きます。
LT1(outer-glass1):熱抵抗「0.051」
LT2(glass1-hollow):熱抵抗「0.046」
LT3(hollow-glass2):熱抵抗「0.046」
LT4(glass2-inner):熱抵抗「0.126」
モデルは以下のようになります。
計算設定
[計算設定]メニューで、計算条件の設定を行ないます。同様に、「計算タイプ」で「非定常」を選択し、計算時間は「18000」、出力間隔は「60」を入力します。以上で解析設定は終了です。
計算実行
設定が終了したら、[計算実行]ボタンを押します。
結果の確認
計算が終了すると、[グラフ]タブに各ノードの温度の時系列グラフが表示されます。
これも同様に、時間軸の単位を[表示オプション]で変更します。非定常グラフの「時間単位」を「時間」に変更し、[再表示]ボタンを押します。
ペアガラスの場合は、1時間後には14℃までしか下がっていません。また、5時間後には2.6℃となっており、1枚ガラスに比べ温度の下がり方が緩やかになっています。ペアガラスの方が断熱性が高いということがわかります。