質問力

先日CAEエンジニアやコンサルタントの立場でのサポート力について書きましたが、今回は質問する側のスキルについてです。

質問する側は、「知らないから聞く、知りたいから聞く」という立場なので、とにかく何も考えずに質問すればよいだろうと思うかもしれませんが、質問の仕方や質問する内容によっては有益な回答を得られないことが多々あります。質問する側のスキルというのも、役立つ情報を得るためには重要になってきます。

CAEでは、ユーザーがソフトウェアベンダーなどのサポートに質問するという場面がよくあります。その時うまく質問しないと役に立つ回答が得られません。私もベンダー時代にサポート担当もしていましたが、その時の経験も踏まえ質問する側のスキルについて書いてみます。

・要点を簡潔に
聞きたい内容を簡潔にまとめましょう。あれもこれもだらだらと書かれていると、何が聞きたいのか焦点がぼやけてしまいます。解析の内容と質問内容を簡潔にわかりやすく書くようにしましょう。メールであれば、質問内容は箇条書きにするなどすれば読みやすくなります。また、一つのメールで違う内容の質問をあれもこれも書かずに、大きな項目は一つに絞りましょう。

・詳細な情報を盛り込む
質問を簡潔にと言いましたが、あまりにも簡潔すぎて必要な情報が入っていないことがあります。
例えば「乱流解析で発散します。対処法を教えてください。以上」みたいな質問だと答える側は困ってしまいます。発散の原因は五万とあるので、すごく一般的、マニュアル的回答しかできません。最低限状況がわかるだけの情報はあらかじめ書いておきましょう。設定内容、モデル規模、バージョン、マシン情報、発散した時の状況、説明図や結果図などなど。
ベンダーによっては、質問のガイドラインを決めているところもあります。必要最低限の情報はあらかじめ伝えるようにしましょう。

・回答のレベルを想定した質問を
回答のレベルは、実は聞く側のレベルに依存していることが多いです。質問の内容や聞き方によって、回答のレベルを決められることがあります。明らかに解析初心者だとわかる方に対しては、難しい専門用語や理論を並べて説明せず、ごく簡単に平易な言葉で回答したりといった具合です。
逆に言えば、かなり専門的に質問すれば、踏み込んだ内容の回答が期待できます(それでも、初心者向けの回答しか来ない場合は、サポート担当のレベルが低いと言えますが。。)。
つまり、質問する側も勉強してレベルを上げていかなければ、いつまでも初心者向けの回答しか得られないことになるのです。

・自作のモデルを見てもらう
解析が発散したり、想定した解が得られない場合、モデルファイルをサポートに直接見てもらいたいと思うことがあるでしょう。ベンダーによりこの場合の対処法は違いますが、モデルを送ることができなかったり、嫌がられるケースが多いと思います。技術サポートでは拒否される場合、営業担当者に言って、調査を依頼することもできます(ただし、頻繁に行うと嫌われるので、いざというときのカードとして、残しておいた方がいいでしょう。私は人のモデルを見て設定の不具合を見つけ出す作業は、宝探しの感覚で好きなのですが、時間がかかるのでこれを嫌うベンダーは多いです。)
いざモデルを送って見てもらう場合ですが、モデル規模は小さくした方がよいと思います。流体解析で、いきなり数百万メッシュのデータが送られてきて、計算結果が出るのに1週間かかるというようなものでは、調査する側が苦労します。短い時間で回答をもらうためにも、モデル規模は小さくしたうえで、解析の概要、設定や条件の情報などのドキュメントをつけて送るようにしてください。

・自作のプログラムは見てくれない
UDFやユーザーサブルーチンなどを自作で作って解析を行っているモデルは、基本的に多くのベンダーではサポート対象外とされ見てもらえません。確かにサポートする側にしてみれば、簡単なサブルーチンであればすぐに見ることができますが、複雑なプログラムではそのプログラムの問題なのか、ソフト側の問題なのか判定するのが難しく、プログラムをすべて把握しデバグしなければならないため、最初からサポート対象外としている所が多いです。
計算が発散するケースでは、サブルーチンを使わない場合は問題無いか、サブルーチン内で異常値になっていないかなど、質問者側でデバグする必要があります。

・バグなのか仕様なのか
ソフトを使っていてこれはバグなのか仕様なのか悩むことがあります。明らかに理論的におかしく意図しない解になったり、設定した通りの挙動になっていない場合など、バグの可能性があります。ただ、設定の組み合わせによっては、そうなってしまう仕様だったり注意が必要です。この場合も、意図した設定はこうだが、こういう結果になってしまうという様に、簡潔に論理的に説明してバグか仕様かハッキリしてもらうようにしましょう。
また、バグかどうかの判定は、設定やモデル規模を極力単純にした上で、計算して行います。単純モデルで意図しない挙動を示す場合、バグの可能性が高いです。

・最新バージョンで試す
バグの話にも関連するのですが、結果が明らかにおかしい場合、必ず最新バージョンで試すようにしてください。ソフトウェアは日々改良されバージョンアップされます。古いバージョンのバグも最新版で修正されていることもよくあります。ベンダーに質問しても、最新版で試すよう回答をもらうと思います。古いバージョンでバグが見つかっても、そのバージョンのまま、そのバグだけ修正されることはまずありません。見つかったバグは最新版で修正されます。
もちろん、ユーザー側では諸事情あり古いバージョンを使っている場合もあるので難しいところですが、最新版で試した上で旧バージョンでの対処法については、あらためてベンダーと協議した方がよいでしょう。

・サポーターとの信頼関係
質問する側も回答する側も人間です。結局、サポートはコミュニケーションの問題が大きかったりします。最近はサポートもチケット制になり、結構ドライになってきました。電話サポートは無しで、メールやWEBからのみという所もあります。昔は担当制が多かったので、自分のサポート担当の人と密にコミュニケーションできていました(もちろん、人対人なので相性の合わない人だとお互い苦痛というのもあったでしょうが)。
高圧的になったり、必要以上にクレームを入れたりするとお互いの関係性が悪くなります。もちろんサポート力の無い残念な担当にあたると、営業担当を通してサポート依頼するなどした方がよい場合もあります。
いずれにしても、お互い信頼関係を持ってサポート担当者とコミュニケーションをとることが大切です。

 

解析内容やソフトウェアが高機能化するにつれ、サポートが必要な場面も増えていきます。質問する側もどうすればより良い回答が得られるか考えながら質問することで、結果的に自分の業務を上手く進めていくことができるようになります。

ちなみに、、、
弊社はベンダーではないので、複雑なモデルや自作のユーザーサブルーチンなど詳細に見させていただくことが可能です。皆さまに密着したサポートができますので、CAE流体解析でお困りの際はお問い合わせください。

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